奈良美智 「Country Home」

yoshitomonara country home

<奈良美智と作品について>
Ragged Glory とともに響く、ひそやかな帰郷の歌
奈良美智の版画《Country Home》を見つめていると、どこか遠くから微かなギターの音が聴こえてくるように感じる。木版特有の柔らかなざらつきの中で、少女はそっとギターを抱え、まるで胸の奥にある小さな物語を奏でようとしている。
作品の片隅に書き込まれた “Ragged Glory” という文字は、まるでその音の源をそっと示すサインのようだ。
“Ragged Glory” は、ニール・ヤングとクレイジー・ホースによる1990年のアルバムのタイトル。その一曲目には《Country Home》という歌がある。荒々しくもあたたかいギターの音が、草の匂いや夕暮れを思わせるような、素朴さと郷愁の入り混じった世界を広げていく。
奈良の《Country Home》にその言葉が刻まれているのを見つけたとき、人々がそこにオマージュを感じ取るのは、ごく自然な流れだろう。
けれど、奈良本人が「これはニール・ヤングへの敬意だ」と語った記録はない。公式な解説にも、直接のつながりは書かれていない。
だが、それでもなお、観る者はそこに音楽の気配を感じてしまう。
それは、奈良の作品に流れる“音”が、言葉にされる以前から、ずっと彼の中で息づいてきたものだからだ。
幼い頃、家にひとり残された静かな時間。
窓の外は青森の風。ラジオからは、遠い国のカントリーやロックが流れてくる。
意味の分からない英語を、ただ「音」として受け取りながら、少年はその音楽に寄り添い、自分だけの世界を育てていった。
その静かな経験が、やがて大人になった奈良の作品の隅々に、かすかな震えとなって宿り続けている。
だから、《Country Home》は単なる“かわいらしい女の子の絵”ではない。
ギターを抱えたその姿には、遠い記憶と、静かな孤独と、誰もが持っている帰る場所への憧れが滲んでいる。“Ragged Glory” の文字が添えられたことで、その情景はさらに深みを帯び、まるで絵そのものが一枚のアルバムジャケットのように、音と時間を封じ込めた小さな宇宙になる。
確かな答えはどこにもない。
けれど、この作品を前にすると、心の奥でそっと鳴り始める音がある。
それは、奈良美智の内側に流れる音楽と、私たちの記憶の中にある“どこか懐かしい場所”が重なり合って生まれる、静かな帰郷の歌なのかもしれない。

< 作品サイズ >    42.0×29.5㎝
< 額サイズ >     50.5×37.5㎝
< 技法 >       木版
< エディション >   ed.50
< 制作年 >      2011
< サイン >      有
< コンディション >  良好

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